貨幣の始まりを物語風にしてみました。
・・「その昔、海彦と山彦がおりました。海彦は海岸沿いに住んでいて、貝や魚や海草を採って暮らしていました。山彦は海彦の住んでいる海岸に流れ出る川の上流の山間に住んでいて、シカやイノシシを獲って暮らしていました。
やがて海彦と山彦はそれぞれ自分たちにないものを求めて、川の中流の野原で日を決めて落ち合い、余分な収穫物を交換し会うようになりました。物々交換の始まりです。
そのうちに、収穫物が増えてきて物々交換をした後にも余りが出てくるようになりました。せっかくここまで持って来ておきながら相手に交換するものが無いというので、また持って帰るのは大変です。特に川の上流に帰らねばならない山彦の方は大弱りでした。
そこで、海彦は宝のようにして持ち歩いていた綺麗な「子安貝」を一個、山彦のもっていたシカ一頭と交換してあげたのです。『この次にはタイをたくさん釣ってくるから、その時はまたこの「子安貝」を返してもらうからね』と言って・・・」
想像をめぐらせれば、はじめの貨幣はこんな風にして誕生したことでしょう。海彦の持ってきたタイやヒラメではなく、また山彦の持ってきたシカやシノシシでもない、第三の物としての「子安貝=貝殻」を貨幣として抽象化したのです。
人類で最大の創造物はこのようにして誕生した貨幣であると思います。それ自体に価値があるものとしての金、銀、銅の鋳造貨幣から、金との交換価値を持たせた紙幣、更には電子マネーに至る「貨幣=カネ」の本質を考える時、お互いの信頼関係という三角形の頂点を目指そうとした偉大な創造力を感じさせます。
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