10-3.印刷技術の革新

◇宗教改革以前のキリスト教会では、聖書は教会内に数冊あるだけでした。従って神父が聖書を独占し、信徒のー人ー人が自宅で聖書を読む習慣はなく、信徒は神父から聖書についての説教を聞くだけという状況だったそうです。

◇宗教改革はキリストの教えの原点である「聖書」に戻ろうとしたわけですから、聖書をー人ー人の手元に行き渡らせることが何よりも重要でした。その頃ブドウ酒を造る際に使う圧搾機(プレス)にヒントを得て、グーテンベルクは活版印刷機を発明します。プロテスタント派はいち早く聖書の大量活版印刷を開始し、広く大衆に聖書が行く渡るようにしました。

◇最初の活版聖書として有名なのが「42行聖書」です。グーテンベルク聖書とも呼ばれています。1455年に初版本が印刷されていますが、カラーで美しい装飾が施されているのできっと当時の「家の宝物」となったことでしょう。

◇この大量印刷という情報革命が引き金となり、宗教改革も進展して行ったのです。これは般若心経を写経することが小乗仏教に対する大乗仏教の宣伝布教活動であったことと類似しています。
◇1989年ルーマニアのチャウセスク大統領処刑というショッキングな映像と共に、東欧・ソ連の共産党政府は次々に崩壊して行きました。その過程を速めるのに役立ったのは、TVビデオや衛星放送それに国際電話やパソコン通信といった近年急速に発達した情報通信技術でした。個々人へ行き渡る真実の情報が大衆を動かして、雪崩のような変革をもたらしたのです。情報は力なりと認識させられました。
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