コンピュータは0と1とで動いているとよく言われます。それは「0」がオフ(電気を通さない)で「1」がオン(電気を通す)であることと、すべての数が0と1のみを使った二進法で表せるからです。ではこの「0」(ゼロ=零)はいつ、どこで、誰が考え出したのでしょうか?

 今、私たちが使用しているゼロの概念(なにが)はインドで生まれたことは良く知られています。まずは(どこで)の答えが出ました。その他の疑問詞に対しても順次考えてみました。歴史上では6世紀ごろ(いつ)のインドの数学の本にゼロの定義が記されているのが現存する最古の記述と言われています。  そして、インドで生まれたお釈迦さま(だれが)の仏教が背景にあるらしいことも知識として得られました。しかし(なぜ)(どのようにして)は、少なくとも私の頭の中ではまだ不明でした。

 そこで、仏教について少し勉強をしました。手掛かりは写経に使う「般若心経」に在りました。その中の「色即是空、空即是色」が大きなヒントとなり、その「空」の概念が何もない位(くらい)に「空位」を示す「0」をもたらしたようです。(どのように)が少し見えてきました。

 では、この「般若心経」はなぜ写経に広く使われて来たのでしょうか? ・・・突然ですが、その答えは当時の情報革命なのです。少し説明が必要ですね。お釈迦さま(ブッダ)は紀元前5世紀に生まれて悟りを開き仏教を広めたのですが、紀元前後ころから改革派が現れて、それまでの仏教の教えを小乗仏教と批判して、大乗仏教を唱え出すのです。「般若心経」はそもそも大乗派の小乗派に対する一大宣伝文に当たります。印刷技術はまだない時ですから、写経をして伝播させていたのです。その大乗派の中心人物が龍樹というインドの仏教哲学者でした。

 龍樹は有か無かの対立する二元論であったそれまでの小乗仏教の考え方に対して、有でもなく無でもないもう一つの存在として「空」を考えたのです。今の数学では(+)プラスでもなく、(―)マイナスでもない存在は(0)ゼロとなるわけですから、(+)=有、(−)=無、(0)=空 という構造を大乗は持ったのです。

  つづき(2-3ゼロの発見物語2)