◇望ましい人物像については、古代ギリシャ時代からエトス・パトス・ロゴスの三つが大切と言われています。それに関連させて人称代名詞で整理したのが望ましい人物像「1−2−3」です。すなわち「一人称で行動でき、二人称で語り合え、三人称で思考する」ことができるかどうかが重要であるということです。

◇まずエトスethos(人格・徳性)については「一人称で行動でき」に相当すると思われます。一人称については
I/my/me、例えば「その件については私に任せてください、最後まで責任を持ってやり遂げましょう」と言えるかどうかです。この1番目がしっかりしていれば、バイタリティーに溢れ、完遂能力があり、他人からとやかく言われなくても自分自身の動機付けで行動できる=モチベーション能力が高くなります。

◇次にパトスpathos(感情・感性)は相手と一緒に泣いたり、笑ったり苦楽を共にすることですから「二人称で語り合え」に相当します。二人称は
you/your/youです。これは親・兄弟や友人たちと語り合え、喜びや悲しみを共に分かち合えるかどうかです。社会人となってからは、お客様の立場を思いやることができるかどうかがポイントになるでしょう。この点は対人感受性や協調性の豊かさ、コミュニケーション能力につながります。

◇三番目のロゴス
logos(論理・理性)は客観的・論理性をもって問題分析ができ、かつそれらを統合することによって新しく創造できるかどうかです。三人称はhe/his/him,she/her/her,they/ther/themです。第三者の立場から自己分析ができ、ものごとを客観的に見て、思考することができるかどうかが問われます。例えば、日本の国内だけで通用すれば良いというのではなく、世界に向けてyes/noがはっきり言えて、説得できるようでなければいけないのです。この点は問題分析力、創造力、プレゼンテーション能力につながります。

◇ギリシャ語のethos,pathos,logosの三つには-osが語尾についていますので、私は
「三つのOS」とも言っています。すなわちコンピュータの世界ではMAC,Windows,UNIX,Linux等のOSがあり、これらが基本となって各種のアプリケーションソフトウエアが動くのと類似させて考えると、人間もハードとしての器が土台にあって、「三つのOS」がその基本ソフトとなり初めて諸活動が可能になると見ることも面白いと思います。なお日本語では同様のことを「知・情・意」と表現しています。「知」は知性・理性、「情」は感情・情熱、「意」は意志・意欲を指しています。

◇古代ギリシャの哲学者
アリストテレスも他人を説得するにはエトス・パトス・ロゴスの順序で行う重要性を指摘しています。先ずは自分の立場を明らかにして、次に他人を思いやり、最後に論理的に説明するということです。それを考慮しないで始めから理屈で説得しようとしては、相手の心が開かれないで説得は失敗すると言うのです。

◇余談ですが、ギリシャ語には、エトス、パトス、ロゴスの他にもエロス、トポスなど短い言葉で−OSが付くものが多く見られます。他にも地名や人名ではロードス、トロス、デロス、ミロス、ミレトス、キプロス、ビブロス、クノソス、オリンポス、ホメロス、メロスなどが有ります。そういえばカオスもそうです、
宇宙を意味するコスモスもギリシャ語です。
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★人智学の創始者であるルドルフ・シュタイナ―が「人間にはD(思考)・F(感情)・W(意志)の3つが備わっている」として黒板絵に残していることを最近になって知り得ました。<シュタイナー人智学>へ
(2010.12.4 千々松 健)
●▲■人間力は武士道の智仁勇に学ぼう!
第三者にも解る客観的かつ論理な思考を通じて、相手を思いやりつつ語り合い、自らが由来して行動に移すようにして、トータルに人間力を発揮していかなければならない。(2014.10.4 追加)